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ノーリフトとは|抱え上げられる側から考える

投稿日2026年8月20日

ノーリフトは、介助者の負担を減らす取り組みとして語られることが増えました。ただ、出発点にあるのは抱え上げられる側がどんな時間を過ごしているかです。人の手で身体を持ち上げられるとき、その人に何が起きているのか。そこから考えると、この取り組みの意味が変わって見えます。

「持ち上げない」は、四つのうちの一つでしかない

ノーリフトという言葉から、多くの方が「持ち上げない」を思い浮かべます。ですが日本ノーリフト協会の説明では、避けるべき動作として四つが挙げられています。

  • 押さない
  • ひかない
  • 持ち上げない
  • 運ばない

「ひかない」「押さない」が入っているのが要点です。ベッド上で身体をずらす、腕を引いて起こす。持ち上げてはいないけれど、身体に力を加えて動かしている場面は一日に何度もあります。ノーリフトはそこまでを含みます。

この考え方はオーストラリアの看護連盟が1998年に始めたものが起源で、日本ノーリフト協会は2009年に設立されています。

「持ち上げられる」とき、何が起きているか

抱え上げられる瞬間、身体は宙に浮きます。掴まれた腕や脇に力がかかり、姿勢は自分で選べません。声をかける間もなく身体が動くこともあります。

痛みや不安だけの問題ではありません。その数秒間、自分の身体の行き先を自分で決められないという状態が、一日に何度も繰り返されます。引かれる、押される場面まで含めれば、その回数はさらに増えます。

尊厳とは、自分の身体の主導権があること

福祉用具や介護機器を使うと、介助はゆっくりになります。用具を当て、声をかけ、本人が力を出せる分は出してもらう。手順が増えるように見えて、実際には本人が関われる余地が生まれます。

「持ち上げない」は、手間を省くための決まりではありません。その人が自分の身体に関わり続けられる状態を残すための手段です。ノーリフトが守ろうとしているのは、まずここです。

なお協会の説明では、腰痛予防に加えて、ケアを受ける側の褥瘡や拘縮を抑制することも目的として挙げられています。ここは団体の説明として紹介するにとどめ、当社の機器の効果として述べるものではありません。

ノーリフトは移乗だけの話ではない

ノーリフトが対象にする場面は一つではありません。

  • ベッドから車いすへの移乗
  • 立ち上がり・歩行のサポート
  • 入浴や排泄時の介助
  • ベッド上での体位変換

協会が挙げる対象範囲にも、移乗・体位変換に加えて歩行補助が含まれています。移乗用リフトを入れることだけがノーリフトではありません。

ただし、場面が違えば必要な機器も違います。移乗の負担を軽くするのは移乗用リフトやスライディングボードで、歩行訓練中の見守りの負担を軽くするのはそれとは別の設備です。「リフト」という一語でまとめて探すと、用途の違う機器を比べてしまいます。この切り分けは 移乗介助と歩行訓練の負担の違い で詳しく整理しています。

高知県は、県ぐるみで取り組んでいます

ノーリフトを施設単位の工夫だと捉えると、話が小さくなります。高知県は平成28年度(2016年度)に「高知県ノーリフティングケア宣言」を出し、県として推進しています。

県は平成26年に介護福祉機器等の導入を支援する補助金を設けており、令和元年度時点で県内の1/3以上の介護事業所がノーリフティングケアを実践していると報告されています。県が挙げている効果には、二次障害の防止、姿勢改善、職員の腰痛防止、離職率の減少があります。

施設側に「ノーリフティングケアの実践」という説明済みの言葉があり、補助の枠組みもある。理事会や自治体に説明するときの言葉が、すでに用意されている状態です。同様の動きは他県にも広がっています。

歩く時間を残すという選択

移乗を用具に置き換えると、次に見えてくるのが「では、その人が自分の足を使う時間はどこにあるか」という問いです。抱え上げられて移動するだけの一日と、支えられながらでも自分で歩く時間がある一日は、同じではありません。

YUMEHO(夢歩)が担えるのは、この歩行訓練の場面です。転倒を機器が支えるため、介助者が転倒防止のためだけに張り付かなくてよくなり、本人が歩くことに向き合う時間をつくりやすくなります。移乗の負担そのものを軽くする機器ではありません。

始めるときに決めること

機器はノーリフトの前提ですが、それだけでは運用は変わりません。誰が、どの場面で、どの用具を使うのか。手順と役割を決め直すところまでが取り組みです。導入後に運用を組み直す話は 設備を入れても人手は減りません で扱っています。

協会には「ノーリフトケアコーディネーター」の養成講座があり、施設内に担当者を置く形も取れます。用具を入れる前に、誰がこの取り組みの旗を持つのかを決めておくと、運用が止まりにくくなります。

当社は2026年8月、高知県の一般社団法人ナチュラルハートフルケアネットワークを訪ね、ノーリフトを推進していくことをお約束しました(ニュース)。

まとめ

ノーリフトは、抱え上げをやめることではなく、押す・ひく・持ち上げる・運ぶという場面を置き換えることです。置き換えることで戻るのは、その人が自分の身体に関われる時間です。自施設でどの場面から始めるかを決め、その場面に合った用具と運用をセットで用意してください。


※ 本記事はノーリフトの考え方を一般的に整理したものであり、痛みや不安の軽減、腰痛や二次障害の予防を保証するものではありません。日本ノーリフト協会・高知県の説明として紹介した内容は各機関の公表情報に基づくもので、当社の機器がこれらの団体から認定・推奨を受けていることを示すものではありません。取り組みの効果は、施設の人員体制・利用者の状態・運用方法により異なります。制度や指針の詳細は各機関の公表資料をご確認ください。